トリプルボトムラインは、企業が求められる3つの側面(経済、環境、社会)への貢献を示すもので、SDGsに代表される企業の持続可能な社会への取り組みを測る重要な指標です。
しかし、トリプルボトムラインを提唱した張本人であるジョン・エルキントン氏は2020年、トリプルボトムラインの思想を取り下げ、新たにグリーンスワンという枠組みを提唱しています。
トリプルボトムラインについて知りたい方、トリプルボトムラインからグリーンスワンへの移行について検討中の企業の方のために、基礎から最新情報までをまとめてご紹介します。
トリプルボトムラインとは
トリプルボトムラインとは、企業が追求すべき経済的側面、社会的側面、環境的側面という3つの評価の軸を指しており、「3つの(トリプル)」「最終行(ボトムライン)」という意味の経済用語です。
経済的側面とは利益の追求、社会的側面とは社会の一員としての企業の貢献、環境的側面とは地球温暖化などへの企業の取り組みの度合いをそれぞれ表すものです。
ボトムラインとは、企業の1年間の通信簿ともいえる収支報告書における「最後のまとめ」に相当する箇所のことで、以前は経済的な側面のみが評価の対象となっていましたが、トリプルボトムラインという考え方が広まるにつれ、企業は3つの評価を同時に満たす活動を求められるようになりました。
トリプルボトムラインは単なる経済理論のひとつに留まらず、企業の社会的責任を示すCSRレポートの国際基準である「GRIガイドライン」にも組み込まれるなど、世界で公的に認められています。
グリーンスワンとは
グリーンスワンとは、不確実性を増す現代において突如として発生するハイリスクな出来事「ブラックスワン」と対になる経済用語で、社会や環境などに良い影響を及ぼす出来事が突如として現れることを指しています。
グリーンスワンとして例示されている事例は、主に技術革新によって社会問題が根本的に解決されるもので、太陽光発電の低価格化や、自動運転や電気自動車の実用化など、想定されているよりも大幅に前倒しで技術革新されている分野が挙げられます。
これまで不確実性はリスクだけを高めるものと考えられていましたが、技術革新に対して不確実性が貢献するケースがあるようです。
グリーンスワン時代の企業の在り方
トリプルボトムラインからグリーンスワンの時代へと移行することは、決して企業がトリプルボトムラインで求められた3つの側面を無視しても良いということではありません。
しかし、ジョン・エルキントン氏がトリプルボトムラインの思想を取り下げるという考えに至ったのは、企業が「これだけ守っておけば十分」という甘い考えにより、単なるチェックリストのようにトリプルボトムラインを使用したからだと説明しています。
制度ではなく、あくまで思想として広まることを期待していたエルキントン氏にとっては、トリプルボトムラインの扱われ方の現状には一切の満足が得られなかったようです。
このような経緯からかグリーンスワンには、具体的な企業のあるべき姿を示す指標や軸のようなものは示されておらず、その代わりに「責任」「強靭性」「再生型」という3つのキーワードが提示されています。
企業や経営者は今後、ブラックスワンとグリーンスワンという2つのスワンが到来する不確実性の非常に高い世の中において、さまざまな変化に対応しながらもスリーボトムラインで示された3つの側面のバランスを忘れずに事業に取り組んでいかなければなりません。