地域の廃棄物を見つけ出して肥料に変える

循環型農業とは、農業や畜産、森林、家庭、製造業、飲食業などから出る有機の廃棄物を活用して、土壌改良や堆肥へと変えることによって再利用し、リサイクル資源による資源の循環を生み出していく農業です。読み方は「じゅんかんがたのうぎょう」です。

もみ殻や米ぬか、鶏糞、牛糞などの産業廃棄物となる資源の活用が代表的な事例ですが、地域住民らの協力を得ながら家庭ごみを堆肥化する取り組みも行われています。

循環型農業を実現させるために最初にやるべきこと、また農場(圃場)にリサイクル資源を入れる際の注意点などについて解説します。

循環型農業は地域を知ることから始める

循環型農業では、農場のある地域にはどのようなリサイクル資源が存在しているのかを調査して、いかに土壌の改善や、農作物の生育に役立つ資材へと変えていくのかを考えることが大切です。

まずは、農場から半径10キロ圏内の地域について知るところから始めてみましょう。

農場から半径10キロ圏内の地域について知る

循環型農業に役立つ多くの資源は、無料あるいは極めて安い金額で譲り受けることが可能ですが、運搬にかかる手間や時間などのコストが発生しますので、できるだけ近隣で調達できることが好ましいです。

株式会社京谷商会では、もみ殻は奈良県の農家さんから、また牛糞は河南町の牧場から、鶏糞は富田林市の養鶏場から、生ゴミ堆肥は狭山市のゴミ処理施設からと、半径10キロ圏内で数多くリサイクル資源を譲っていただいています。

循環型農業が「地域循環型農業」や「資源循環型農業」などと呼ばれるのは、このような農場のある地域において様々なリサイクル資源が循環する構造となるからです。

循環型農業のリサイクル資源の見つけ方

循環型農業によって地域の廃棄物を集めて農作物を生産するという取り組みは、日本国内のほとんどの地域では行われておらず、なかなか有益な情報を得るのは難しいものです。

最初は大変ですが上手くいけば生産にかかるコストを継続的に抑えることができ、捨てるべきものを引き取ってくれると喜ばれるケースも多いので、とにかく頑張って探し出しましょう。

私たちが実際にやってきたリサイクル資源の見つけ方についてご紹介します。

農場の周辺の農家さんに聞いてみる

まず聞き取り調査の最初は、農場の周辺で畑をされている農家さんです。

化学肥料を使用する慣行農業をされている農家さんであっても、もみ殻や稲わら、米ぬかなどは使用されているケースが多いですので、さまざまな情報を得ることができます。

農地の近所づきあいを大切にしていると思わぬところで助けられることが多いですし、極めて近い場所でリサイクル資源を手に入れることができる可能性があります。

農家さんに聞いてみる

地域のJAに聞いてみる

JA(農協)は、化学肥料や農薬を販売して収益を得ている団体であるため循環型農業に対しては否定的な立場をとられていることも多いですが、やはり地域の農業について熟知している貴重な存在です。

農業を始めるにあたっては、JAの組合員になっておくと、リサイクル資源の探索のようなJAにとって全くメリットの無い相談であっても、気軽に問い合わせることができます。

インターネットで検索する

農地の周辺や、地元のJA以外での情報収集としては、やはりインターネットを最大限に活用することが重要で、「〇〇市 牧場」とか「〇〇町 鶏糞」などと片っ端から検索していきましょう。

具体的な地名を入れずに検索すると、遠い場所ばかりが出てきてしまいますので注意してください。

また、インターネットで発見した場所に行く際には、必ず事前に電話での問い合わせをするようにしましょう。いきなり訪問しても担当者が不在で時間を無駄にすることが多いです。

メルカリやヤフオクをチェックする

同じくインターネットを活用する方法として、Googleなどの検索エンジンを使用するだけでなく、メルカリやヤフオクなどの個人間売買を行うサイトをチェックすることも忘れないでください。

また、近隣エリアに絞って情報収集を行うにはジモティも有効です。

メルカリやヤフオクでは現在出品中の商品だけではなく過去に取引された履歴をチェックすることも可能ですので、もし手に入れたいリサイクル資源を出品したことがあるユーザーを見つけたら、現在は出品中でなくても問い合わせてみるようにしましょう。

役所や役場の農林課に聞いてみる

役所の農林課は、担当者のやる気次第で得られる情報に大きな差がありますので、「あまり良い情報は得られないだろうな」と諦め半分で聞いてみると、意外と有力な情報がでてきて驚くことがあります。

農地に土着菌を入れるのに有効な落ち葉などは、実際に集めようと思っても見つけるのが困難なのですが、森林や公園などを管理している役所であれば情報が得られやすいです。

また、土壌中のリンを取り除くために有益な浄水ケーキは、役場からの紹介で浄水場を訪れれば、大量に入手できる可能性があります。ただし、処理方法によっては土壌改良に不向きな浄水ケーキもありますのでご注意ください。

循環型農業には”そのまま売る”の可能性も

循環型農業の狭義の意味合いからは外れてしまいますが、地域には何も手を付けなくても存在しており、そのまま売ることが可能な当たり前の存在である商品が眠っている可能性があります。

例えば農家にとっては天敵ともいえる存在の雑草類のなかにも、収穫と出荷調整を行うことによって都会では価値のつく商品が混ざっているかもしれません。

当たり前の存在を地域の産業へと進化させた事例として有名なのが、徳島県上勝町の葉っぱビジネスで、町の大半の面積を占める森林にある葉っぱを出荷することで、年間2億円を超える経済効果(売り上げ)となっています。

上勝町の葉っぱビジネスの具体的な内容は、別記事「株式会社いろどり – 葉っぱビジネスで地方創生を実現した地域商社」で詳しく紹介しています。

さらに循環型農業で農場設備の充実も

循環型農業として無料や低価格で手に入れることが出来るリサイクル資源は、もみ殻や糞尿などの有機物だけではありません。農場で使用する設備についても低価格で入手できる可能性があります。

例えば、IBCコンテナやバルクコンテナと呼ばれる1000リットルの液体が入る1立方メートルの貯水タンクは、中古であれば1万円前後で良品を手に入れることができます。

また地域によっては高齢のために農業を引退するという方から農機具やトラクターなどを安く譲ってもらったというケースもあるようです。

農業関連の備品や設備は、新品で買いそろえるには非常に高価なモノばかりですので、出来る限り費用を抑えるために地域で活用されていないものを利用する方法を探すようにしましょう。

農林水産省が循環型農業を推進している

日本の農業政策を担っている農林水産省では、農業の新境地の開拓に向けた取り組みのひとつとして循環型農業の推進を挙げており、環境負荷に配慮した農産物の生産に役立つ取り組みであるとしています。

現在の日本の農業が”化学肥料への依存度が高ま”り、”過度の効率追求や不適切な資材利用・管理”が行われることによって、”農業生産活動が環境への負荷を与える”ケースが見られると指摘しています。

循環型農業が、持続可能な生産活動が推進され、環境への負荷が低減する効果が期待できることから、環境保全のためにも循環型農業の取り組みが大切であるとのことです。

循環型農業で気を付けるべきこと

無料や低価格で手に入れることができる資源を活用する循環型農業は、コストを抑えながらも野菜を元気に育てることができる農業の理想形のひとつであると思います。

しかし、多くの場合、リサイクル資源を持っている農家や牧場、養鶏場などでは、循環型農業に関する知識が無く、当然のことながら循環させることを意識せずに日頃の業務をされています。

このため、どのようなリサイクル資源を農場へと入れるのかについては、あくまで自己責任であることを十分に理解して、人体にとって有害な物質が混入しないように注意しなければなりません。

また、家畜の糞尿は、土壌改良に役立つ牛糞、野菜の生育を促進させる鶏糞などのように、それぞれ異なる効果があります。馬糞については臭いが強く、堆肥化に時間を要するため、おすすめできません。

有機のリサイクル資源は、化学肥料のように効果や効能が明確ではありませんので、しっかりと情報収集を行いながら、理想的な循環型農業を実現させてください。